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スリアインタビュー『ヨガと私』vol.2~後編~ by森田尚子

2021.03.05
  • コラム

■スリアインタビュー『ヨガと私』Vol.2

ヨガは“常識に縛られない本来の自分”と繋がること

<後編>森田尚子先生

 

フリーダイビングの選手を経て、日本で数少ない“ヴェーディック・チャンティング(ヴェーダのマントラ)”の正式指導者になった森田尚子先生。華麗なる転身を遂げた成功の秘訣は「好奇心のまま動く」こと。バイタリティーにあふれた生き方、ヨガ観について聞いてみました。

 ▲ヴェーダを学ぶ時に行うプージャ(儀式)のひとこま。プージャには様々な意図があるが、この時は、ヴェーダを伝えてきた古代からの先生に対する感謝と敬意を表すもの。森田先生の右隣に写る男性はクリシュナ・マチャリア師の孫、デシカチャー先生。

 

――(以前のお話しは「インタビュー前編」をご覧ください。

 

村上華子:フリーダイビングのスキル向上のために始めたヨガですが、今ではすっかりヨガの先生としてご活躍ですね。今では毎年インドに通って、ヨガやマントラの勉強をされていますが、海に潜る生活から一転、インドへ行こうと思ったきっかけを教えてください。

 

森田尚子:早朝にヨガをして、そのままフリーダイビングの練習に行く。合間にヨガの仕事をして、夜になるとまたプールへ…というハードな生活を送っていたら体調を崩してしまって。世界大会に出場した後に、アスリートとしての活動からは離れました。ちょうどその時にヨガのルーツを辿っていたら、日本でクリシュナ・マチャリア師(近代のヨガマスターのひとり)のヨガを専門的に指導するヨガスタジオがあることを知りました。そこで学び始めたのがきっかけになり、次は、クリシュナ・マチャリア師のご子息、デシカチャー先生から直接ヨガを学びたくなってインドへ行きました。

 

華子:気になったら絶対にやるんですね(笑)                 

 

森田先生:そうなの、絶対やるの(笑)好奇心のまま動く! インドにあるクリシュナ・マチャリア師のヨガを教えている施設に行き、現地の先生に直談判をしました。「私はヨガを知りたい。あなたの知っていることを全部教えて欲しい」と。そこから年に一度、三年目からは年に二回インドに通いました。だいたい一年のうち2カ月はインドにいますね。昨年はコロナの影響で行けなかったけれど、インドに通うようになって今年で10年目です。

▲【写真:左】インドのヨガの施設で行うヨーガセラピーのトレーニングでは、アーユルヴェーダの知識を用いた脈診のデモ診断も行う。
【写真:右】クリシュナ・マチャリア師の写真の前でヴェーダ(マントラ)の先生と森田先生。

 

華子:すごいな~!圧倒的な行動力ですね。挑戦したいけど無理かなって、あきらめる人も多いと思います、これは自分を含めて。

 

森田先生:あきらめてサッパリできるならいいけれど、そうじゃない人も多いでしょう。「やめた」という選択に、腹をくくれていないというか。やめるという選択をするのは簡単だけど、そのツケは死ぬ間際にくる。たとえば、80歳になっても何かしら挑戦はできるけれど、できる内容は限られてきますよね。やりたいという情熱は自分の中の光というか、ひらめき。それを大事にしたいですね。

 

華子:やりたいことに挑戦できないというのはなぜなのでしょう。モチベーションが継続できなくて、途中であきらめてしまうこともありますよね。

 

森田先生:挑戦できない、続かないというのは、もしかするとその人の本当の望みじゃなかったのかも。世間の流行りとか、あの人がやってるからという思いつきで。SNSだと“映える”ものに価値がある風潮だけど、実は、心から「これだ!」って思うことは、そんなにかっこいいものじゃないかもしれない。ヨガでは自分の使命を「ダルマ」と言いますが、そういう大きなくくりの挑戦ではなくても、例えば「カレーが食べたい」と思ったらすぐに行動するとか。まずは、小さな望みを無視しないことから始めるといい。大切なのは頭で考えずに、ハートがきらめくこと。ヨガの「本来の自分につながる」というメッセージは、こういうことですよね。

 

華子:他人軸のアイディアではなくて、自分のハートがきらめくこと! そして、それをキャッチしたらすぐに行動に移すということですね。先生の実体験のように。ちなみに、「本来の自分と繋がる」を平たく言うと?

 

森田先生:「本来の自分」とは、“子どもの頃に持っていた素直さ”とか、“世間の常識に縛られていない本来の自分”という言い方でも表現できます。

 

華子:わかりやすいです。では、「本来の自分と繋がる」ために、先生は普段どんな練習をしていますか?

 

森田先生:私は、マントラを含めたヨガの全般を、毎日朝と夕方の2回練習しています。マントラはすごくパワフルですよ。けして、呪文のような意味を唱えることが目的ではなくて。たとえば、アーサナは体、プラーナヤーマは呼吸というように、マントラは音のバイブレーションをツールにしています。

 

華子:クリスタルボールの波動と同じ感覚ですね。

 

森田先生:そうなんです。音の波動がガツンと本質に響くような究極の瞑想です。マントラの音のバイブレーションは、私が持っていた常識的な何か、自分を苦しめていたものをバリバリっとはがしていき、本質だけを残していく。そういう体験でした。とはいえ、社会の常識、親の言葉、メディアの影響、そういうものが当たり前だと思って数十年生きてきたわけだから、誰でも簡単に変わるものではないかもしれないけれど、継続していくことで確実に変わっていくプロセスは見えてきますよ。

 

華子: なるほど。「ヨガ哲学」と言うと難しいけれど「ハートで感じるのための練習」と思えばすごくシンプルなことですね。最近のコロナ禍で、“自分軸で生きる”という言葉をよく耳にするようになりましたが、これこそまさに。今の時代になかなか生きがいをみつけられない人には、こういう目的を持ってヨガの練習を続けていくことがとても助けになりますね。私も練習を重ねて(そして、ひらめいたらすぐに行動して!)、先生のようにたくさんのご縁を繋げていきたいと思いました。ありがとうございます。

 

◇森田尚子

プロフィール

「ヨーガ・ヴェーダ協会」代表。クリシュナ・マチャリアのヨーガ正式指導者(インド政府公認)。ヴェーディック・チャンティング正式指導者。定期的な渡印で研鑽を積みながら、ヨガの専門誌の企画監修、都内有名スタジオで指導者養成講座のメイン講師の経験等、活動は多岐に渡る。現在Youtubeにて、ヨーガスートラをチャンティングするライブ配信を行っている。

 

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◇聞き手:村上華子

プロフィール

2004年にヨガを始め、綿本彰氏にヨガを学ぶ。ヨガ仲間と共に『HAS YOGA銀座』を設立。
また、ヨガの指導のかたわら、中医学をベースにした薬膳フードデザイナーの資格を取得し、ヨガと薬膳のコミュニティー『季結び庵』を主宰。
ヨガによる心身の健康法に加えて、日本の風土、四季の移ろいに合わせた薬膳(食養生)のレクチャーも行い、自然と調和した、心地よい暮らし方の提案している。

2015年~アジア最大級のヨガイベント『ヨガフェスタ横浜』に、講師として毎年登壇。
さらに、ヨガを中心に心と体に向きあうための記事を執筆する編集・ライターとしても活動の場を広げ、様々な角度からヨガの魅力を伝えている。

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